高齢者になると心身の衰えが始まり、さまざまな病気や疾患のリスクが高まります。とくに65歳以上の高齢者で、要介護または要支援の認定を受けた人の割合が年々上昇しており、健康寿命を伸ばすための生活習慣づくりや、病気の早期発見・早期治療が大切です。
本記事では、厚生労働省が2019年に発表した国民生活基礎調査を元にして、高齢者に多い病気ランキングを紹介していきます。
高齢者に多い病気ランキング
心身の衰えが始まる高齢者は、さまざまな病気や疾患のリスクを抱えていますが、とくに注意が必要なのが「入院や介護につながる病気」です。
厚生労働省の2019年国民生活基礎調査によると、介護が必要な状態(要介護または要支援状態)になった原因は以下のとおりです。[注1]
現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因の構成割合
原因 | 総数 | 要支援者 | 要介護者 |
認知症 | 17.60% | 5.20% | 24.30% |
脳血管疾患(脳卒中) | 16.10% | 10.50% | 19.20% |
高齢による衰弱 | 12.80% | 16.10% | 11.40% |
骨折・転倒 | 12.50% | 14.20% | 12.00% |
関節疾患 | 10.80% | 18.90% | 6.90% |
心疾患(心臓病) | 4.50% | 7.10% | 3.30% |
呼吸器疾患 | 2.70% | 2.60% | 2.70% |
悪性新生物(がん) | 2.60% | 2.60% | 2.70% |
糖尿病 | 2.50% | 3.00% | 2.30% |
パーキンソン病 | 2.30% | 1.90% | 2.60% |
脊髄損傷 | 1.50% | 1.50% | 1.60% |
視覚・聴覚障害 | 1.40% | 1.70% | 1.10% |
その他 | 9.10% | 10.30% | 8.10% |
わからない | 1.10% | 1.40% | 0.80% |
不詳 | 2.40% | 3.10% | 0.90% |
たとえば、高齢者の17.6%が認知症、16.1%が脳血管疾患(脳卒中)が原因で介護が必要になっています。このように、介護が必要となった主な原因をみると、高齢者がとくに気をつけるべき病気や疾患のランキングがわかります。
- 認知症
- 脳血管疾患(脳卒中)
- 高齢による衰弱
- 骨折・転倒
- 関節疾患
- 心疾患(心臓病)
- 呼吸器疾患
- 悪性新生物(がん)
次の項目からは、高齢者に多い病気ランキング上位の主な症状やリスク、患者数などを解説していきます。
認知症
認知症は、もっとも要介護状態になるリスクが高い病気のひとつです。認知症とは、脳機能の衰えにより、記憶力や判断力が著しく低下する病気を指します。
加齢による物忘れと違い、なにかを忘れたという自覚そのものが消失するのが認知症の特徴です。
厚生労働省の2019年国民生活基礎調査によると、認知症がきっかけで要支援状態になった人の割合は5.2%にとどまりますが、一方で24.3%の人が認知症が原因で要介護状態になっています。[注2]
また、65歳以上の認知症の人口千人当たりの患者数(入院者をのぞく通院者数)は、男性が255人、女性が494人で、女性の患者のほうが多いのが特徴です。[注3]
脳血管疾患(脳卒中)
脳血管疾患は脳卒中とも呼ばれ、脳の血管の破れや詰まりにより、脳機能が損傷する疾患を指します。代表的な脳血管疾患として、脳の血管がつまる脳梗塞、血管が破れる脳出血、くも膜と呼ばれる場所の血管が破裂するくも膜下出血などが挙げられます。
内閣府の令和4年高齢社会白書によると、65歳以上の高齢者の死因のなかで、悪性新生物(がん)、心疾患、老衰に次いで4番目に死亡率が高い疾患でもあります。[注4]
脳卒中の人口千人当たりの患者数は、男性が675人、女性が406人と、やや男性のほうが多くなっています。[注3]
[注4]内閣府:令和4年版高齢社会白書(第1章 高齢化の状況 第2節 2)P27
関節疾患
関節疾患とは、全身の関節に病変が生じ、身体を動かしづらくなったり、痛みを感じたりする疾患のことです。高齢者の場合、主に膝の関節や股関節に病変が生じやすいとされています。
代表的な関節疾患として、膝の軟骨に負荷がかかる変形性膝関節症や、股関節の可動域が制限される変形性股関節症などが挙げられます。
また、免疫異常などの原因により、関節に炎症が生じる関節リウマチも含まれます。
厚生労働省の2019年国民生活基礎調査によると、関節リウマチの人口千人当たりの患者数は男性が143人、女性が434人です。関節症全体でみると、人口千人当たりの患者数は男性が500人、女性が1,259人となっています。[注3]
関節疾患は、男性よりも女性のほうがリスクが大きく、とくに変形性膝関節症の患者の約半数が女性だといわれています。
心疾患(心臓病)
心疾患は心臓病とも呼ばれ、悪性新生物(がん)や脳血管疾患(脳卒中)と並んで、日本人の死因上位の三大疾病のひとつでもあります。
内閣府の令和4年高齢社会白書の65歳以上の高齢者の死因別の死亡率をみると、高血圧をのぞく心疾患の死亡率は2番目に高く、人口10万人当たり532.6人の死亡者が出ています。[注4]
代表的な心疾患として、心筋(心臓の筋肉)が障害を起こす心筋梗塞や、心臓を取り巻く冠動脈が詰まりを起こす狭心症などが挙げられます。
また、高齢者の方は、心房(心臓の部屋)がけいれんを起こす心筋細動にも注意が必要です。慢性的な心房細動が続くと、脳梗塞を引き起こしやすくなるため、健康的な生活を送りましょう。
心疾患のリスクは、加齢とともに上昇していきます。厚生労働省の2019年国民生活基礎調査によると、狭心症・心筋梗塞の人口千人当たりの患者数は、男性が1,120人、女性が702人と、男女ともに多くなっています。[注3]
呼吸器疾患
呼吸器疾患は、肺の病変や筋力低下などの原因により、呼吸器にさまざまな障害が起きる疾患です。高齢者がかかりやすい疾患のひとつで、死亡率が高い肺炎のほか、肺気腫、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などが知られています。
また、近年は新型コロナウイルスの流行をきっかけとして、呼吸器の不調を訴える人も増えてきました。呼吸器疾患にかかると、呼吸や運動がしづらくなり、生活の質(QoL)が低下するのも問題点のひとつです。
とくに高齢者の場合、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者数が多く、男性の患者が140人、女性の患者が34人となっています。患者全体の男女比をみても、男性のほうが患者数が多い疾患のひとつです。
悪性新生物(がん)
悪性新生物(がん)は、死亡率が高い三大疾病のひとつです。男性の場合は、肺がんや大腸がん、胃がん、前立腺がんなどにかかりやすいとされています。また、子宮がん、乳がん、卵巣がんなど、女性に特有のがんも存在します。
内閣府の令和4年高齢社会白書によると、65歳以上の人でもっとも死亡率が高いのががんです。人口千人当たりの患者数は男性が418人、女性の患者数は339人となっています。[注3]
【まとめ】高齢者に多い病気を知って健康対策を始めよう
高齢者になると、認知症や脳血管疾患(脳卒中)、関節疾患、心疾患(心臓病)、呼吸器疾患、さらにはもっとも死亡率が高い悪性新生物(がん)など、さまざまな病気や疾患にかかりやすくなります。高齢者に多い病気ランキング上位を知り、毎日の健康対策や病気の早期発見・早期治療を心がけることが大切です。
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