遺伝性認知症とは?原因や発症リスク、調べ方を解説
「家族に認知症の人がいると自分にも遺伝するのだろうか」「遺伝性認知症とはどのような病気なのか」と不安に感じていませんか。
認知症は加齢によって発症リスクが高まるとされていますが、一部には遺伝子の変化が関係すると考えられているタイプもあります。ただし、多くの認知症は遺伝だけが原因ではなく、普段の過ごし方や環境要因など複数の要素が関係するといわれています。
本記事では、遺伝性認知症の特徴や関係する遺伝子、遺伝が関係するとされる認知症の種類、リスクの考え方、調べ方などを整理しました。
遺伝性認知症への理解を深めることで、健康管理や医療機関への相談を検討する際の参考になるでしょう。
目次
遺伝性認知症とは?

遺伝性認知症とは、特定の遺伝子変異が関連する可能性がある認知症です。認知症にはさまざまな要素が関係しますが、遺伝子の変化が強く影響するタイプもあります。
ただし、認知症の多くは加齢や身体活動、食事、環境要因など複数の要素がかかわると考えられており、遺伝のみが原因とされるケースは一部に限られています。
遺伝子の変異と聞くと強い不安を感じるかもしれませんが、遺伝子だけで認知症の発症が決まるわけではありません。
遺伝性認知症との関連が示唆されている主な遺伝子

遺伝性認知症との関連が示唆されている主な遺伝子を解説します。
遺伝性認知症の理解を深めるためにも、各遺伝子の概要を把握しておきましょう。
APOE遺伝子
APOE遺伝子は、アルツハイマー型認知症の発症リスクとの関連が研究されている遺伝子です。脂質代謝にかかわるとされており、脳内の神経細胞の働きにも影響する可能性があると考えられています。
APOEには複数の型があり、特定の型を持つ場合にはアルツハイマー型認知症のリスクが高くなる可能性が指摘されています。ただし、該当する遺伝子型を持つ人すべてが認知症を発症するわけではありません。
TREM2遺伝子
TREM2遺伝子は免疫機能にかかわる遺伝子であり、近年の研究で認知症との関連が指摘されています。脳内では、免疫細胞の働きを調整する役割を持つと考えられている遺伝子です。
脳内では炎症反応や老廃物の処理が神経細胞の健康に影響するといわれており、TREM2遺伝子は神経細胞の保護に関連する可能性があると考えられています。
遺伝子に変異がある場合、アルツハイマー型認知症のリスクが高まる可能性があるという研究結果も報告されていますが、現在も研究が進められており、仕組みには多くの要素が関係すると考えられています。
遺伝が関係するとされる認知症の種類

遺伝が関係するとされる認知症にはさまざまな種類があります。
遺伝の関与が示唆されている認知症について、詳しく見ていきましょう。
家族性アルツハイマー病
一般的なアルツハイマー型認知症と比べて、比較的若い年代でみられるケースが多いとされています。
家族内で複数例がみられることがあり、特定の遺伝子変異との関連が知られている認知症です。APP遺伝子やプレセニリン遺伝子などの変異が関与すると考えられています。
ただし、家族性アルツハイマー病は認知症全体の中では比較的少ない割合とされており、多くのアルツハイマー型認知症は加齢や運動、食事など複数の要素が関係すると考えられています。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉の神経細胞が障害される認知症の1つです。行動や感情、性格の変化などが早い段階から現れることがあります。
一部の症例では遺伝子変異の関与が知られており、家族内でみられるケースが報告されています。特定の遺伝子の変化が神経細胞の働きに影響すると考えられています。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、レビー小体と呼ばれる異常なたんぱく質の脳内への蓄積によって起こると考えられている認知症です。幻視やパーキンソン症状などが特徴的な症状と知られています。
レビー小体型認知症は基本的に遺伝性疾患ではないとされています。ただし、リスクに関係する可能性がある遺伝子については、現在も研究が進められている状況です。
遺伝要因だけでなく、加齢や神経細胞の変化など複数の要素がレビー小体型認知症に関連すると考えられています。
レビー小体型認知症は下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。
遺伝性認知症を発症する確率

遺伝性認知症を発症する正確な確率は明らかになっていませんが、特定の遺伝子変異が原因となるアルツハイマー病は全体の1%未満とされています。
多くの認知症は、遺伝以外の複数の要素が重なっていると考えられており、家族に認知症の方がいても、必ず発症するわけではありません。
一方で、特定の遺伝子変異が確認されている家族性認知症では、遺伝する可能性が高くなるケースもあります。家族歴や年齢が気になるときは、医療機関への相談を考えてみてください。
遺伝性認知症の発症リスクを調べる方法

遺伝性認知症の可能性が気になる場合には、医療機関への相談も選択肢の1つです。医療機関への相談で、遺伝的要因の有無や現在の状況について理解を深める参考になるでしょう。
医療機関では問診を通じて、本人の症状だけでなく家族歴や普段の行動や様子なども確認されることがあります。家族内で複数の例がある、または若い年代で認知症が疑われる際は、遺伝的な関連の可能性について検討されることがあります。
また、必要に応じて遺伝子検査によって、特定の遺伝子変異の有無を調べることも可能です。ただし、遺伝子検査は結果の意味や心理的影響を考慮する必要があるため、医療機関での説明を受けたうえでの慎重な判断が望まれます。
認知機能の維持に向けて推奨される主なポイント

認知症は遺伝以外にも関連が示唆されている要素がいくつかあります。WHO(世界保健機関)が発表したガイドライン「認知機能低下および認知症のリスク低減」で推奨される主なポイントを紹介します。
ただし、ここで紹介する方法は対応の一例であり、症状に不安を感じたり普段と違う変化があったりするときは、迷わず医療機関に相談しましょう。
バランスの良い食事
栄養のバランスがとれた食事は、体調管理の基本的な生活習慣として広く知られています。
とくに野菜や魚を取り入れた食事は健康維持に役立つとされています。また、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病のリスクを抑えるために、過度な塩分や脂質を控えることも大切です。
生活習慣病と認知機能低下の関連が研究で指摘されているため、バランスの良い食事を心がけましょう。
認知症予防に関連するとされる食事の詳細は、下記のページで解説しているので、参考にご覧ください。
適度な運動
ウォーキングをはじめとする有酸素運動は身体機能の維持に役立つ運動とされ、多くの場面で推奨されています。また、定期的な運動は身体機能の維持や生活習慣病の予防につながる点でも重要です。
日常の中で無理なく続けられる運動を選ぶことが継続のポイントです。散歩や軽い体操など、負担にならない程度の取り入れやすい活動から始めると良いでしょう。
気楽にできる運動や実践ポイントは下記の記事で詳しく説明しているので、参考にご活用ください。
社会的交流
家族や友人との交流は活力を保つために重要とされています。人と会話する機会を設けることで精神的な刺激が得られる場合があります。
また、地域活動や趣味などの社会参加は日常に変化をもたらす可能性があり、活動の中で新しい経験や交流が生まれることもあるでしょう。
人とのかかわりを持つ意識は生活の充実につながり、認知機能との関連が研究で指摘されています。
遺伝性の認知症が心配な場合の対応

遺伝性の認知症に関する不安がある際の対応を紹介します。
認知症に関する心配があるときに落ち着いて対応できるよう、各項目を把握しておきましょう。
医療機関に相談する
家族に認知症の既往がある場合は、医療機関への相談で正確な情報を得られる可能性があります。
医師による問診で確認される項目の例は以下のとおりです。
- 現在の体調
- 普段の行動や様子
- 認知症に関する家族の状況
必要に応じて検査がおこなわれることもあり、現在の状態を客観的に把握する材料になります。
生活習慣を見直す
食事や運動習慣の調整は、健康管理に役立つ取り組みの1つです。生活習慣病の予防は身体の健康を維持するうえでも重要とされています。
特定の方法だけで認知症を防げるわけではありませんが、生活の見直しは健康維持への効果が期待できます。日常生活の中で取り入れられる内容から少しずつ意識すると、無理なく生活習慣の改善を続けられるでしょう。
家族で情報を共有する
家族内で健康状態や生活状況についての話し合いが大切です。認知症の家族歴を共有しておくことで、医療機関で相談する際の参考情報にもなるでしょう。
また、認知症に関する知識の共有も欠かせません。家族全体で理解を深めておけば、変化が見られた場合の落ち着いた対処につながります。
遺伝性認知症に関するよくある質問
遺伝性認知症に関するよくある質問を整理しました。より詳しく理解するための参考にしてください。
母親が認知症の場合は子どもに遺伝する?
母親が認知症であっても必ず子どもに遺伝するわけではありません。認知症の多くは遺伝だけが原因ではなく、複数の事柄が関与すると考えられています。
家族に認知症の方がいる場合でも、必ず認知症を発症するとは限りません。気になるときは医療機関への相談も選択肢の1つです。
認知症が遺伝する確率は?
認知症が遺伝する確率は一律ではありません。認知症の種類や関連する遺伝子によって、可能性は異なります。
たとえば、特定の遺伝子変異が原因となるアルツハイマー病は認知症全体の1%未満とされており、割合は高くはないといえるでしょう。
認知症の多くは遺伝だけでなく、普段の過ごし方や健康状態なども影響すると考えられています。遺伝は認知症の数ある原因の1つと理解しておきましょう。
遺伝子検査は誰でも受けられる?
遺伝子検査は、医療機関で相談したうえで受けられる場合があります。検査の必要性や目的について、医師の説明を受けることが一般的です。
遺伝子検査では、特定の遺伝子変異の有無を確認できます。ただし、検査結果だけで将来の認知症のリスクを断定できるわけではありません。
検査結果の受け止め方や心理的な影響も考慮する必要があるため、医療機関での説明を受けながら慎重に検討しましょう。
遺伝性認知症は予防できる?
遺伝子そのものを変える予防方法は、現時点では確立されていません。また、遺伝子の有無だけで認知症のリスクが決まるわけではなく、生活習慣の見直しをはじめ、日々の過ごし方の工夫が健康管理では重要です。
食事や運動などの習慣を整えることは、健康維持につながる取り組みです。加えて、社会活動への参加や積極的な社会との交流も、生活の活力を保つ要素として注目されています。
遺伝性認知症が心配なときは医療機関に相談しよう
遺伝性認知症は特定の遺伝子変異がかかわる場合がありますが、認知症には遺伝以外の要因も関連するとされています。家族に認知症の方がいても、認知症になるわけではないため、過度に不安になる必要はありません。
家族内で認知症の例があるときや、若い年代で認知症の症状が疑われるときは、医療機関への相談を考えてみてください。専門家の説明を受けながら健康管理をおこなうことで、状況を理解しながら対応を検討できます。
また、認知症の基礎知識は下記の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にご覧ください。
【参考文献】
PMC.Alzheimer disease: epidemiology, diagnostic criteria, risk factors and biomarkers
PubMed.TREM2 variants in Alzheimer’s disease
PMC.Autosomal-dominant Alzheimer’s disease
PMC.Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies
PubMed.Phenotypic signatures of genetic frontotemporal dementia
厚生労働省:認知機能低下および認知症のリスク低減 WHOガイドライン
Alzheimer’s Association.Is Alzheimer’s Hereditary / Genetic?
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